美味しい牡蠣フライの作り方

どんな料理の場合でも同じですが、まずは「良い食材」を選ぶ事、これで大勢は決まってしまいます。
牡蠣は、海から引き上げてから、傷みの進みが早い食材です。
良い海で育った良い牡蠣を、海から上げて、どれだけ短時間で口に入れるかが、最も重要なポイントです。
良い牡蠣に言葉はいりません。
牡蠣は、海から貰った栄養、滋養の塊です。本当に美味しい。
しかも、育った海によって、味の特徴が異なるのです。
広島の牡蠣、岡山の牡蠣、伊勢の牡蠣、松島の牡蠣、新潟の岩垣、北海道厚岸の牡蠣、それぞれ特徴のある味と甘さ、冬は牡蠣好きには嬉しい季節です。
「生牡蠣」「焼き牡蠣」「蒸し牡蠣」「牡蠣のオイル漬け」「牡蠣ご飯」、どれも美味しいですが、極め付きは「牡蠣フライ」でしょうか。
私が洋食屋さんのオーナー料理人から教わった「美味しい牡蠣フライの作り方」を説明します。


美味しい新鮮な牡蠣を購入して下さい。
今では、牡蠣の養殖業者もホームページを開いているので、産地から直接購入することが出来ます。
「牡蠣フライ用」と言って注文すればいいと思います。


(1)牡蠣の下ごしらえ
ポイントは一つです。
何度も水で、丁寧に綺麗に洗ってしまう方が多いようですが、これは厳禁です。
牡蠣の旨みと栄養分を、どんどん捨ててしまってはいけません。
新鮮な牡蠣は、ザルに移すだけで、水分を拭き取ることはしないようにしましょう。
但し、すでに牡蠣の表面に「ぬめり」がある場合は、大根おろしで「ぬめり」を取り除きましょう。


(2)小麦粉のまぶし方
牡蠣に小麦粉をまぶしますが、ここでの注意ポイントは、小麦粉ははたかない。
小麦粉は、タップリ、隙間なくまぶす必要があります。
理由は、二つあります。
一つ目は、「旨みを閉じ込めるため」です。
二つ目は、こうすると牡蠣の水分が漏れ出ないので、揚げた時に「パチパチと油がはじける」ことが無くなります。揚げ物調理が怖い原因は、油が水をはじくことですから、はじけないのは助かります。


(3)使用するパン粉
小麦粉をまぶしたら、溶いた卵で完全にくるんで、次にパン粉をまぶします。
この時、牡蠣に万遍なくパン粉をまぶすために、「生パン粉」を使って下さい。
「乾燥パン粉」を使う方が多いようですが、パン粉が固いと、びっしりと万遍なくまぶすには、硬い「乾燥パン粉」では難しくなります。柔らかい「生パン粉」だからこそ、隙間なくびっしりとまぶせることをお忘れなく。


(4)パン粉のまぶし方
たっぷりのパン粉の上に牡蠣を置いたら、上からパン粉をかけて押してしまう方が多いですが、これも厳禁です。
上から押すと、牡蠣は柔らかいので、厚みのある個所と薄っぺらな個所が出来てしまいます。
そうなると、火の通りが均一になりません。その結果、全体が美味しいという具合にはならないのです。
正しいパン粉のまぶし方は、牡蠣の上からたっぷりパン粉をかけて、パン粉ごと手ですくい、まるでクリームコロッケのような丸い形に仕上げるということです。


(5)油への投入方法
いよいよ牡蠣を油に入れますが、パン粉でくるまれた牡蠣全体を手でくるむように持って、形を崩さないように優しく油に滑り込ませます。はじっこを指でつかんで入れたりすると、その部分はパン粉が裂けてしまい、そこから旨みが逃げてしまいますし、水分も出ていってしまうので、油もはじけます。


(6)揚げ油の温度と揚げる時間
揚げ油の温度は175℃です。そして揚げる時間は2分強です。
多くの方は4分ぐらいの時間をかけているようですが、これでは完全に揚げ過ぎです。
2分強ですと、油から引き上げた時は、約8割程度「火が入った状態」ですが、余熱で芯まで熱が入っていきますので、食べる時に丁度“ふっくらジューシー”という状態になります。
この「余熱」ということを覚えておくと、加熱調理の腕はグーンと上がります。
実際、4分も揚げてしまうと、食べる時には熱が入り過ぎ、牡蠣の芯まで固まってしまい、とてもじゃありませんが「ふっくらジューシー」とはいきません。
牡蠣は「海のミルク」とも言われます。
クリーミーな甘さが牡蠣の命、やはり「ふっくらジューシー」が美味しいですね。


いかがですか?
きっと読んでいるだけで「美味しそう」といった気持ちになるのではないでしょうか。
家族全員が、「フハ!フハ!」しながら、揚げたての「衣はカリッと香ばしくて、中身はクリーム状のアツアツ牡蠣フライ」を食べるなんて、なかなかのものです。
ここに、白ワインがあれば、いう事なしですね。