みなさん、本当にありがとうございます。
アカデミーに感謝を。この会場にいる全員にも感謝します。今年ノミネートされた素晴らしい方々にも、お祝いを述べたいと思います。
「レヴェナント:蘇りし者」は、信じられないようなキャストとクルーの不断の努力によってつくられた作品です。
まず、兄弟のようにこの試みに取り組んだトム・ハーディへ。トム、君のスクリーン上の強烈な演技を超えるのは、スクリーン外での友情だけです。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、映画界の歴史が広がっていくとともに、あなたはこの2年間の道
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刑事ニックは押収品の横領を疑われていた。6月の事件で得た押収品の一部が消えている。
ニックは妻と離婚し、慰謝料と子供の養育費で相当の出費があるはずだ。内務捜査官は、ニックが押収品を横流しし、それで得た金を慰謝料と養育費にしていると考えていた。
もちろんニックは容疑を否認。そんなはずはない、と完全否定した。
査問が終わり、ニックはレストランで同僚のチャーリーと合流する。
そこで和やかに昼食――というわけにはいかなかった。レストランには日本のヤクザも居合わせていた。ニックとチャーリーはヤクザを気にしながら食事を続ける。
そこに、黒いコートの男が現れた。佐藤だ。
佐藤はヤクザの一団の中へ入っていく
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レクターが姿を消して十年が過ぎた。
レクターは今どこにいるのか――死んでいるのか生きているのか、誰も知らない。
あれから十年。
その間、誰も悲鳴を上げず、悪夢を見ることもなかった。
静かに平和な時が過ぎ――しかしどこかに悪魔が眠っている気配を感じていた。
映画は静かなメロディと共に始まる。場所はどこかの屋敷のようだ。バーニーが招待を受け、醜い顔をした男と対談している。
醜い顔の男はメイスンだ。かつてレクター博士に手ひどい仕打ちを受け、復讐のためにその消息を追っている。
バーニーが招かれたのは、レクター博士の情報を売るためだった。レクター関連の遺物は、その筋のマニアに高く売れるのだ。バーニーは
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モトラが仕事場を出て通りに出ると、突然、切迫した声がした。
「頼む、捕まえてくれ! 私の財布を引ったくった!」
モトラが振り向くと、足を引き摺りながら叫ぶ老黒人がいた。その手前を、財布を持った男が疾走している。
モトラは突然すぎて、ぽかんと引ったくりを見送ってしまった。するとそこに、ハンチングの若者が飛び出してきて、持っていたトランクを投げた。
引ったくりは、トランクをぶつけられて倒れた。その手から財布が落ちた。
引ったくりはすぐに起き上がって、ナイフを手に身構えた。
ハンチングの若者が、引ったくりに立ち向かおうと対峙する。モトラも、ここで応戦するようにハンチングの若者に並んだ。
引ったくりは
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宝石商のゲートを、四人のラビが潜り抜けた。
「話は聞いているか。文字通り受け取っては駄目だ。アダムとイヴの物語は、道徳的寓話だ。実話
のはずがないだろう。素敵な物語だが、所詮、作り話に過ぎない。カトリック教は誤解が多い。ギリシャ語訳の旧約聖書は“若い女”を“処女”と誤訳している。原書のヘブライ語の綴りが似ていたからだ。“処女に我らの息子が宿る”という預言も誤りだ。処女という言葉が誤解を招いた。処女が子供を宿すわけがない……」
四人のラビはくどくどと議論を交わしながらエレベーターに乗り、廊下を進み、そのあいだ喋り続けていた。ところがオフィスに入った途端、突然四人の
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雨が降ると街が静かになる。人があまり外に出ないからか、雨が騒音を吸い取ってくれるからか。
せせらぎのような音がさらさらと流れ、時々、車が水溜りをはねる音が静けさを破る。
まるで街全体が何かを待ち構えるように、軒下で身を潜めている。もしかしたら、待ち構えているのは我々が想像もしない危険かもしれない。
映画『セブン』では、ほとんどのシーンで雨が降っている。まるで騒々しいロサンゼルスの喧騒を押し殺すように、小さな滝が流れる音が延々続いている。
眠らない街、ロサンゼルス。華やかなネオンが常に街を色鮮やかに照らし続ける大都市。
そんなロサンゼルスの街が、長く続く雨に静まり返っている。
だがそんな雨の中で
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誰もが人に聞いた。
「タイラー・ダーデンを知っているか?」
僕は半年間、不眠症に悩まされていた。眠れない日々が続くと現実の何もかもが曖昧になる。遠くにかすんで、コピーのコピーのコピーのように擦り切れてしまう。
「不眠症では死なないよ」
医者は突き放すように診断を下した。薬も出してくれない。頼むよ、苦しんだ。
「君が苦しい? 睾丸ガン患者のグループに出てみろよ。あれが本当の苦しみだ」
僕は睾丸がん患者のグループセラピーに参加した。そこで出会ったのがボブ。
ボブはボディビルの元チャンピオンだったが、筋肉増強剤の濫用でホルモンバランスが崩壊し、今や神の乳房を持つ大男になっていた。
見知らぬ他人の
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突然、銀行が襲われた。襲撃者は安物のスーツにピエロのお面。銀行の正面からだけじゃない。襲撃者は銀行を複数箇所から襲撃し、警報機と電話線の繋がりを切り、金庫をこじ開ける。
計画的な犯行だ。しかし間もなく、襲撃者達は仲間同士で殺し合いをはじめる。
「ボスが用済みを殺せってさ。分け前が増える」
「そうか。偶然だな。俺も言われた」
殺し合いに殺し合いを重ね、ついにはたった一人になってしまった。
「仲間を殺して得意か?」
銀行員の一人が襲撃者の生き残りを罵った。
「お前もボスから同じ目に遭わされるぞ。昔の悪党は信じていた。名誉とか敬意ってものをな。今時の悪党はどうだ? 信念はあるか!」
ピエロお面の襲撃
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